父なるライン川

ドイツのガス危機については既にご紹介したが、今まさに大変な状況のドイツに追いうちがかかっている。それはドイツの主要河川のライン川に発端する。ライン川はヨーロッパ中部を流れ、オランダ、フランス、ドイツを流れる大河川。さらにこの川はドイツにとっては歴史的に物流の要になっており、多くの企業がそのサプライチェーン継続のためにライン川を使っている。今そのライン川の水位が低下しているのだ。既に水位は2018年以来の水準まで低下しているが、報道によればまだまだ低下する余地があるようだ。既に航行できる船舶に制限がかかっている状況だが、場合によっては事実上の航行不能となるリスクも十分あり得る

※以下Bloombergよりライン川

そうなると真っ先に影響を受けてくるのが、原材料や製品の輸送にライン川を使う製造業。さらに、エネルギー危機の真っただ中で苦戦しているユーティリティ企業達も影響を受ける。独ウニパーによれば、一部の発電所からの発電量を削減しなければならない可能性が出てきているようだ。既に警戒されているエネルギー危機の状況に拍車をかける現象が今まさに起きている。原因は天然ガスの代替として使用されている石炭。この石炭はライン川を渡って発電所に輸送されているため、川の水位の低下がそのまま発電に直結している(ロイター記事:Low Rhine water level to hit output at two German coal plants)。欧州のエネルギー危機では飽き足らず、ライン川からくる物流危機まで発生するとなると、これは欧州にとっては更なる悪材料になるに違いない。

EURUSD相場を見ると、現在ボックス圏での推移が確認できる(Bloombergを使用し作成)。エネルギー危機に加えて、ライン川の水位低下に伴う物流危機も進展していく可能性を考えれば、欧州の経済が力強いとは到底考えられない。FEDが利下げを休止するということでマーケットは盛り上がっている様子だが、ECBが途中で利上げを小休止するリスクの方が現実的にはもっと高そうだ。そうなった場合、再びEURUSDはパリティを試し、さらにもう一段下方向への動きを加速するものと考えている。

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